【ネタバレなし】塩田元規著「ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力」書評
アカツキのことを知っていたから気になった
アカツキ創業者の塩田元親氏の経営哲学・人生哲学について語られた著書。創業10年で売上281億円、利益136億円というトンデモナイ業績を作り上げたその根本に迫った一とのこと。
アカツキ自体、スマホゲームではとても有名な会社で元々知っていたが、それほど業績が良いとも思わなかった。出しているタイトルを見ると
- ロマンシング サガ リ・ユニバース
- ONE PIECE ボン!ボン!ジャーニー!!
- アイドルマスター
- 八月のシンデレラナイン
といった有名タイトルを複数出している。女性、男性を問わずファンの多い作品を多く出している稀有な会社だ。
とはいえ、そんなに業績が良いとは知らなかった。スマホゲームの会社には一発屋が多い。複数ヒットタイトルを出せる会社はほとんどいない。
あの大ヒット作「パズドラ」をつくった会社でさえ、パズドラを超えるヒット作を出せずに苦しんでいる。その売上も徐々に落ちているとのこと。スマホゲーム業界は非常に厳しいようだ。
どんな経営方針で何を大切にしているのか、知りたかったのだ。
8月のシンデレラにまつわる素敵なエピソード
アカツキの有名タイトルである「8月のシンデレラ」には素敵なエピソードがあった。
野球が好きな女子というのは昔から一定数いる。小さな時はチームで一緒に野球をプレーすることができるが、中学・高校と体が大きくなるにつれて「野球」をプレーすることは難しくなる。
野球好きな女子はどこへ行くのか。「ソフトボール」か「野球部のマネージャー」だ。
高校野球でも女子部員の登録は認められているが、公式試合に出場することはできない。もちろん甲子園でも女子選手の出場登録は認められていない。
女子選手は甲子園に行くことはできない。マネージャーとして甲子園に行くのを支えるか、ソフトボールでプレーする他、野球と関わる選択肢がないのだ。
そこでアカツキは考えた。
「野球好きな女子が甲子園でプレーする」
そういった想いを夢から「8月のシンデレラ」が生まれたと聞いたことがある。
儲けてしまったスマホゲーム会社
スマホゲーム会社というと重課金者やゲーム中毒者を生み出す「悪」のような存在だと言われている。課金するよう誘導して、お金をむしり取る存在のように言われることも少なくない。
しかし、スマホゲームでよくプレーするものの話によると、課金や広告で必死に儲けようとするゲームはすぐに廃れるというのだ。
それは「ワンピース」や「ドラゴンボール」「プリキュア」「ポケモン」といったビッグタイトルのテーマを扱ったかどうかも関係ない。広告予算を数億から数十億かけ、100万ダウンロードを超えたかどうかも関係がない。
予算をかけていきなり多くのユーザーを獲得したとしてもなにかにつけて広告をクリックさせたり、課金に誘導させるゲームはあっという間に廃れていくというのだ。
つまり、スマホゲームでヒット作となるかどうかは「運営の力」の比重が多いのだが、アカツキのゲームは少し変わっている。
無課金者でも長く楽しく遊べるつくりになっていて、とても珍しい。ダイヤやスタミナなどの便利アイテムも惜しみなく配る。それでももっと楽しみたい人は課金しても楽しめるよ、といったスタンスに見える。
無料のユーザーも有料のユーザーも楽しんで遊べるつくりを追求した結果、儲かってしまった会社なのだ。利益率が高く、急成長しているからといって、「お金をむしりとっているのだ!」と指摘するのは少し違う気がする。
まだ目次しか読んでいない
これほど熱く語ってきたものの、まだ私は目次しか読んでいない。
今のところ、魂の進化とか書いてあり、ビジネス本よりは自己啓発のジャンルに近い内容のため、好き嫌いは分かれそうな本だという印象。
自己啓発本として見ると「どこにでもよく書いてある本」とも言えるし、ハートドリブンというキャッチな内容から採用促進するための「会社の宣伝」と捉えられるかもしれない。
しかしながら、紆余曲折有りながら、関わる人達の"感情"を大切にしようとしてきた会社であることは読み取れる。そしてそれは作品を通して充分に伝わってきている。実際に何を大切にしていくのか、じっくりこれから読み進めたいと思う。